第2話。メンズ館。えるむへこんばんわ。
前話、たった13分で終わってしまったミルキー。
そしてバイクで走ること3分。ホッとの老舗メンズ館へ訪れた。
ピンポーン。
今日は学生のパート希望の方が、えるむを見学するという事で一緒に訪問という形になった。
えるむを知る方は毎度の光景であろう。まずは決まってS君がお出迎え。その後、なんだなんだ、と次々と何処からともなく登場するメンバーさん達。
どこからともなく登場。スタッフ木本。
4月からえるむ担当となった、メンバーさんとの関わりをこよなく愛する、事務がちょっぴり嫌いな37歳。
こちらは調理人のFさん。グループホームの調理人としてだけではなく、作業所のクッキーやケーキ作りを手伝ってくれたりと、法人を以前から多方面にわたって支えてくれているスーパー調理人さんだ。
そして、「なんだなんだ」と集まるのはほんの一瞬。皆はすぐ自分の立ち位置へ戻っていく。
えるむは男性5名のグループホーム。
この日はメンバーさんが宿泊体験で1名来られていたので、6名のメンバーさん
スタッフは女性の調理人さんが1名。夜勤者が男性2名。そして担当者1名。さらに私とパート見学の方ということで、男性が11人にも膨れ上がってしまっていた。
部屋で跳んでいる方、TVに夢中な方、あちこちと室内を歩き、走り、それぞれ自由な時間を過ごしていた。
そしてえるむと言えば、何といってもこれ。
調理人さんへかけられる、非常に高い圧力。
調理の最中、入れ替わり立ち代わり必ず誰かが見ている。そう、その距離半径50センチ以内。
以前は写真のような青いカーテンはなかった。そのため腹を空かせた猛獣たちは出来上がる前から獲物を狙っていた。
正面からT君、サイドからS君が、斜めではY君が何やら話しかけてくる。巧みなフォーメーションを操り獲物を狙う。
和える前の具材、調理前の生野菜、焼く前の生肉。あらゆる物が標的だ。特に生肉については間一髪、という事がしばしば見られた。
調理人さん達はスタッフと共に防御態勢をとりながら毎日約7人分を調理する。敵に背中を向けたら最後。何かがない。
そこで、2年ほど前からこのカーテンを取り付けたのだ。このカーテンのおかげで現在は50センチの距離を保ち、腕もなかなか届かない、ほど良い距離を保てるようになったのだ。ただ、Tくんからの熱すぎる視線は今もまだなお。
そうこうしていると時刻はもう17:30。メンバーのT君がお出かの時間。ヘルパーさんがこれまた男性2名。
T君は電車への愛情が、人500倍強く、毎日17:30から出かけている。そう毎日週3回は電車へ乗り、交通費がとてつもないため、週2回は電車を見にいくという毎日を過ごす。週末は、もちろん電車へ乗る。そう、人500倍なのだ。中央線と阪急線が大好き。
このあたりからは、再び・・・。なんだなんだタイムSUPER。
T君のヘルパーさんが来ると、ビトンをまとったS君が何故か玄関へ。それにつられてT君も。あなたたち違いますよー、と木本氏。
空いた調理監視台へH君が。そしてY君の登場に至る。何故か玄関には外出とは関係ない方達ばかりが集結・・・。
ちなみに白シャツ同士、初対面で見つめあう2人。左がこれから外出するT君。見学者を10秒、無言で凝視する。今日は格別に長い。テレパシーか何か見えない力が働いている模様。
よくぞ笑顔で耐えました。初めての経験でドキドキしてた様子。
さあ食事が完成し、T君以外のみんなは夕食。
T君。すさまじく早い食べ出し。お箸が来る前からスタート。そしてそのあとはお箸と素手の共演。すさまじく早い。
えるむがもっとも静まり返る瞬間。かちゃかちゃ。もぐもぐ。じゅるるる。 響き渡る生活音。
老舗メンズ館えるむ。
一人ぐらしのゆったり感を感じるミルキーに相対して、
男臭さ満載の、まるで高校時代の体育会系のクラブを思い出させるかのような館、えるむ。
これから円陣でもくみ出すかのような玄関での結束感、調理人を囲むフォーメーション、そして食事で両手を巧みに操るT君の個人技。
たったこの30分で、ブラジルワールドカップを意識した生活を見せていただいた。まさに一瞬の出来事であった。
恐るべし、メンズ館えるむ。
サッカー好きにはたまらなく愛おしいグループホームになること間違いなし。
こうして、ザックジャパンなテンションを連れて、私は第3のグループホーム、かりんへ向かうのであった。
*TEKAWA*